経済学の多元性を求める国際学生連合(International Student Initiative for Pluralism in Economics)がごく最近”経済学の多元性を求めて”という公開状を発表した。これは各所で反響を呼び、たとえば、フィナンシャル・タイムズ紙は、「万国の経済学徒は団結せよ!」というタイトルで、この問題を取り上げている(2014年5月5日)。
この連合は、英国とドイツが多いが、世界19カ国の42の学生グループからなる集合体である(残念ながら日本は含まれていない)。この公開状は経済学の現状に関して考えさせるものを持っている。
・現在の経済学はきわめて狭い範囲の手法しか教えておらず、これでは21世紀に我々が対応しなければならない問題(金融システムの安定性、食料安全保障、気候変動問題など)を解くには不十分である。
・多元性は、理論、手法、学際性の3分野から広げられねばならない。理論面では、新古典派のみに偏らず制度派やエコロジー派の議論も取り入れるべきである。この際、経済哲学や経済学史をきちんと教える必要がある。手法に関して言えば、数学や統計学が重要なのは認めるが、定性的な手法もきちんと教えるべきである。つまりなぜそのような仮定を取ったのか、また数量分析の結果の応用可能性に関してもきちんと教えるべきである。学際性に関しては、経済現象が複雑であることを認め、社会学、政治学、歴史学の観点からの分析も重視すべきである。
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この公開状の趣旨はもっともであり、しかもそれが先生でなく、学生から出たところに、時代の風を感じる。日本の学生にこうした動きがないのは残念だが、学生の質自体が落ちているのかもしれない。日本では経済学部の人気は落ちており、いまや経営学の方が人気が高いという話を聞く。
こうした動きは、世界で始まっており、たとえばマンチェスター大学の学生は、「金融危機以降の経済学会」(Post-crash Economics Society)を組織したようである。
これを見て思い出すのは、日本でいうと自主講座(1970年代初期から宇井純氏や松岡信夫氏によって組織された公開自主講座、公害問題などを扱う)である。いつの時代にも新しいことに挑戦するのは、学生の仕事なのかもしれない。
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