英国銀行の率直さ

  • 英国銀行は日本で言えば日銀にあたる。英国の金融政策の要をつかさどる総本山だ。
  • フィナンシャルタイムズ紙(2017年2月22日)によると、首相に対して、「英国銀行は次の金融危機や景気後退を予測できない」と明言したようだ。
  • 日銀や日本のエコノミストは残念ながら、これが何を意味するかがよくわからないだろう。アメリカのエコノミストであるシムズなどの議論で盛り上がっている程度だから。
  • 英国銀行のこの言明は、単なる技術論ではなく、深い背景がある。これは通常”マイケル・フィッシュ・モーメント”と言われている。マイケル・フィッシュは英国のテレビ天気予報者で、1987年に大外れな予測を出したことで有名だ。
  • 英国銀行の予測不能論の背景にあるのは、現在の経済学が、金融危機以降の経済現象をうまく把握できていないという認識がある。英国銀行のチーフ・エコノミストのハルデーンは、これは大恐慌があった1929年と似ており、その時には新たなアイデアとしてケインズ経済学が生まれたことを指摘している。
  • 今回の金融危機も、時代に合った新しい経済学を必要としている。ハルデーンは、経済哲学者シャックルの言葉を利用して、経済システムは安定状況にあるのではなく、また将来の事象は、”人々の創意や空想力”によってしか見ることができないと説いている。
  • こうした状況に対応しようとするのが、当方のアンドン・システム一号の2025シミュレータだ(本年半ばに発表予定)。

(参考文献)

Haldane A.,"GLS Shackle Biennial Memorial Lecture",Nov, 2016