· 

キーパ(keepa)の意味するもの

キーパ(keepa)の意味するもの

  2017.04.23

・キーパ(keepa)というソフトをご存じだろうか。

筆者も最近ウォールストリート・ジャーナル紙を読んで知った。

 

・このソフトは,要するにアマゾンに出品されている商品の価格推移をリアルタイムに追いかけるものだ。対象商品数は,2017年4月22日現在で、2.4億個(日本に関しては3,560万個)となっている。

 

・これらの商品の個々に関して、リアルタイムの価格推移が示される仕組みとなっている。使うときにはちょっと注意が必要で、言語を日本語に、対象をamazon.co.jpにすると日本のアマゾンの商品が、検索の対象になるようにできる。

 

・これで商品の価格推移を見ると、リアルタイムでアマゾンの市場で提供されている価格が、アマゾン等のアルゴリズムにより、変化していることが見て取れる。これを監視するのがキーパであり、それを使えば、買いたい商品が安くなったとき、お知らせメールを受け取ることもできる。

 

・図に示したのは,P社製の電動歯ブラシの価格推移だ(1年間)。その変化が新品並びに中古品も含めて示されている。

 

・このソフトをみて二つのことを考えた。第一は、日本の類似業者(たとえばカカクコム)との差だ。日本の業者では価格推移はもっとおおざっぱにしかとらえられていない。これはたとえばgメールが提供するアンチウィルスシステムと日本のプロバイダが提供するスパムメールの除去システムとの差ともいえる。両者を使えばわかるが、gメールのスパムメール排除のシステムは遙かによくできており、しかも無料ときている。これは残念ながら、技術水準の差といえるだろう。日本はIT大国になるなどと,政府は標榜しているが、こうした基本技術の差を埋めない限り、あまり明るい将来は開けないだろう。

 

・なおアマゾン市場に参加する業者向けには、hft(高速取引)に加わるため、AIを活用したフィードバイザ(feedvisor)というソフトがあるようだ。

 

・キーパを見てもう一つ思ったのは、既存の経済学の無力化だ。ミクロ経済学では,価格が経済主体(企業や消費者)に提示され,それに基づいて最適行動が取られる(利潤最大化や効用の最大化)と想定されている。

 

・しかしアマゾンやそれに参加するサードパーティがやっているのは、相手の出方によってリアルタイムに値段を変えて、利益を上げるというやり方だ。もちろん経済学でも寡占理論などと言うのがあって、こうした供給者間のゲームをとらえようとしているが、ここで行われていることは、もっとダイナミックだ。しかも代替品の範疇として、新品と中古品が同時に取り扱われている。面白いのは、こうした状況下で消費者はより賢い行動を取り得るということだ。アルゴリズムの癖を読めば、それをうまく逆活用して、業者を出し抜くことができる。これは株式投におけるhft(高速取引)攻略法とほぼ同じ流れである。

 

・それにしても,このソフトは簡単に使うことができるので、まず試してみて見ることをおすすめする。その上でいろいろ考えてみたらどうだろうか。

 

(参考文献)

WSJ、「アマゾン出品商品、知られざる値動きの裏側」、2017年3月29日

    "The Hig-spped Trading behind your Amazon purchase""