消費税論議とe予測
2017.09.30
衆議院解散に伴って、消費税率アップに関する論議が盛に行われている。
しかし新聞などを見ていると、そこには重要な論点が抜けている感じがする。
たとえば以下のような論点だ。
(1)消費税を上げることで,景気は低迷しないか(「景気へのマイナスインパクト」)。
(2)消費税を上げるとき、外部環境(例:アメリカや中国の景気、為替レートなど)が変わると、それは税収にどのような影響を及ぼすか(「外部環境の影響」)。
(3)消費税率を上げることで財政危機は解決に向かうか(「財政危機への効果」)。
残念ながら、今行われているのは、消費税アップによる税収増を所与として(約5兆円)、その配分を巡る論争のみのようだ(借金返済分の一部を教育無償化の財源へ)。しかし上の3つの論点をきちんと議論しない限り、消費税率アップの意義は明確にならない。
上の論点をもう少し詳しく論じてみよう。
まず論点(1)(「景気へのマイナスインパクト」)だが、政府の試算では,成長率や物価上昇率を所与として計算しており、消費税アップのマクロ経済へのフィードバックはそもそも論じられていない。こうした点はまさに民間シンクタンクの出番だろう。よく成長トレンドとの比較で議論が進められているが、物価への影響、他の税収(所得税、法人税)への影響、国際収支への影響などマクロ経済を多面的に検討する必要がある。
論点(2)(「外部環境の影響」)。これは景気の良いときと,悪いときで消費税率アップの,国内経済への影響は異なってくることだ。たとえばアメリカ経済の景気が低迷すれば、日本の景気にもマイナスのインパクトを受けることになる。すでにアメリカの景気はそろそろ峠にきており、それの日本経済への影響を慎重に吟味しておく必要がある。
論点(3)(「財政危機への効果」)は、この程度の税率アップで、財政危機の抜本的改善につながるかどうかだ。もしかしたらせいぜい問題の悪化を数年遅らせるだけかもしれない。もし財政危機が,日本経済の重大問題であるなら、それへの抜本的対処案をまず作成し,その上で今回の消費税率アップの意味づけを行うべきだろう。
ちなみに、e予測は,一応上の3点の検討が,具体的にできる仕組みとなっている。
(参考)
毎日新聞社説、「消費税の使い道変更 いつどこで議論したのか」,2017年9月22日
内閣府、「中長期の経済財政に関する試算」、H28.1.21