中堅国家日本論
2017.11.18
下の図をご覧いただきたい。これはアメリカ、中国、日本のGDP(名目、ドル表示)を比較したものである。
これをみるとわかるように、第一に印象的なのは中国の伸張である。これはすでに多くの人が触れていることだから、ここで議論する必要はない。肝心なのは中国の2000年代後半の高成長(年率10%を遙かに超える)で、これはIT革新によるグローバル化の影響が大きい。IT革新がなければ、中国の経済大国化はもう少し時間がかかったろう。
確かに、アメリカの成長率を平均3%として、中国のそれが6%であれば、いずれ中国がアメリカのGDPを追い抜く日が来るかもしれない。しかしそれが起こるにはいくつかの前提が必要で、それが満たされるかどうかは、e予測をご覧いただきたい。
ここで議論したいのは、中国ではなく、日本の行く末である。ここ何年かの日本の経済論議は物価の伸びの回復や円安による輸出拡大効果など短期的な経済回復に焦点が当たっている。しかしもっと先のことをきちんと議論すべきではないだろうか。
図を見ればわかるように、日本経済は1990年代以来停滞の20年を過ごしている。しかも最近のGDP低下(ドルベース)は円安によるものである。円安が本当に日本経済に効果があるとすれば、それが輸出増などで成長を回復させ、これによってドルベースのGDPも伸びていくことだろう。それがなければ、円安はドルベースでみたGDPを低下させるだけである。
他方で、海外から見れば、円安は日本の資産(土地など)が割安になることを意味する。日本企業の価値も同じことだ。海外からの買い手が殺到するのも無理はない。しかしその行く末はどうなるだろうか。
GDPのグラフを見る限り、日本経済は、2000年代半ばに中国に抜かれ、今後も停滞を続ける(もしくは緩やかな低下)可能性が高い。だとすれば、どの程度のGDP水準でこの国の経済規模を落ち着かせるのかを、真剣に議論する必要がある。
一つの可能性は、経済大国などという夢を捨てて、中堅国家としての生きる道を模索することだろう。この場合、どのような形で、世界の他の国と協力もしくは競合していくかを明らかにしていく必要がある。世界における日本の存在意義は、何かをもう一度見直す必要がある。私見では、温暖化問題の制御にリーダーシップを取り、難民問題に向き合うことだろう。そうでないと、世界の中で、真の友人を作ることは難しい。