テスラ3の評判
2018.02.10
テスラの大衆車版テスラ3が昨年半ばから販売されているが、日本ではその生産ペースが予定通り進まないことから、冷やかしやからかいを基調とした記事が多い。これを読むと、クルマ王国の日本もつつがないという印象を受けがちだ。しかし話はそう簡単ではない。
テスラ3の生産ペースが遅いのは事実のようだ。しかしクルマ自体のの評価はあなどれない。すでに高級車版のテスラSは、2017年のコンジューマー・レポート誌でもユーザ満足度はトップを占め、クルマ界で確固たる地位を占めている(ロスアンジェルス・タイムズ紙、2017年12月21日)。
その大衆版であるテスラ3にも、人々の興味は集まっている。むしろ生産の遅れをゲーム化している感じすらする。ウォールストリート・ジャーナル紙によると、ライバルメーカーは必死でテスラ3の実物モデルの入手を試みている。そのニーズを満たすため、たとえばケアソフト社(Caresoft)はテスラ3を10万ドルで入手し、その構造をctスキャンして自動車メーカーに販売しているという。
テスラ3の評価がほぼ固まったのは、アメリカの自動車専門誌ザ・ドライブが本年1月に、このクルマの長期走行を行い、本格的なレビューを発表したからだ。
その評価を一言で言えば、”T型フォード以来の最も重要なクルマ”(the most important car since the MOdel T)ということになる。T型フォードは1908年に発売開始された世界最初の大量生産乗用車である。
ザ・ドライブ誌はテスラ3を、既存のユーザから借り受け(メーカーの提供車でないことが重要)、これを4,600キロ(2,860マイル)ほど運転した。その所要時間は50時間とされている。
テスラ3は高級車テスラSの大衆版という位置づけだ(価格は3万5千ドルから、ただしオプションをつけるとあと1万ドル程度が必要になる)。
ザ・ドライブ誌が指摘したこのクルマの利点は以下の通り。
*スピードが速い。時速100キロに達するのに要する時間は5.1から5.6秒。ちなみにBMW3のハイブリッド版は5.9秒。また低重心のため,安定している。
*クルマの中が静粛。従来の自動車につきもののエンジン音や風切り音が聞こえない。したがってオーディオの性能をフルに堪能できる。
*燃費が安い。テスラのスーパーチャージャーポイントを利用した場合、このテスト走行に要した燃料費は101ドルであったという。ちなみにBMWのM5で同じ距離を走れば600ドル程度かかったと想定される。
*クルマの性能がネット経由で自動的に改善される。テスラはこれをOTA(over-the-air)と呼んでいる。今われわれがたとえばカーナビの更新でも販売店に行くと、時間とコストのかかることにうんざりしているが、これが自動的に行われることになる。
*15インチディスプレイの使いやすさ。これはわれわれがたとえば今アマゾンのファイアスティックを使ってみれば、既存のテレビやビデオのリモコンの使いにくさに気づくことと同じだろう。
テスラSはすでに日本でも上陸しているが、テスラ3もそのうち日本に入ってくるだろう。いつも言うことだが、今の日本はクルマメーカーのがんばりで世界経済を何とか生き抜いている。テスラが大衆車でも基盤を築いたとき、日本メーカーは生きていけるだろうか。燃料電池車(FC)に使った時間とコストが悔やまれる。クルマだけでなく、世界の動きは速い。カナダのトルドー首相は、世界の変化は早くしかも年々加速しているとダボス会議で述べた。日本の新聞やテレビを見るだけでは、この感覚は感じ取れないだろう。のんびりしている暇はあまりない。
(参考)
・Roy A.,"Tesla Model3:The first serious review",The Drive,Jan.5,2018
・Higgins T.,"What to Scoop on Tesla's Model 3? That will cost you $500,000"
WSJ,Jan.31,2008
日本語版、「テスラのモデル3ひっぱりだこ、意外な顧客とは」
・Mtchell R.,"Tesla is tops in buyer satisfaction,Consumer Report says",LAtimes
Dec.21,2017