自動運転車の近況:ソフト企業の優位高まる。
2018年3月10日
カリフォルニア州では、自動運転車の州内テスト運行を認め、その走行実績を当局に報告するよう求めている。2017年のレポートが最近発表された(2018年1月31日)。
これを見ると自動運転車の開発状況と実力が一目でわかる。その特色は、この分野で、自動車メーカーでなく、シリコンバレーのソフト企業の優位性がはっきりしてきていることだ。
報告された中で、もっとも走行距離が長いのは、グーグルのwaymoだ。このクルマの2016年のカリフォルニア州におけるは2016年の走行距離は63万5千マイルだったが、2017年にも35万2千キロを自動運転で走行した。走行距離が前年に比べ減ったのは走行条件の異なる他の州での実験を増やしてからのようだ。たとえば、雪のシカゴなどで自動運転の経験を積んでいる。
グーグル以外のIT企業で、カリフォルニア州で自動運転の実験を重ねているのは、Drive.aiとGM-Cruiseである。
Drive.aiはカリフォルニア州への報告によると、2017年の自動運転車走行距離は6千マイルを超えていた。2016年の走行距離が600マイル弱だから、経験を積みつつあることがわかる。同社はスタンフォード大のAIのプロが集まって作った会社でLyftと組んでいるようだ。
GM-Cruiseは、元々Cruise Automationと言い、ITキッズの一人カイル・ボクト(Kyle Vogt)の作った自動運転車の企業である。これをGMが2016年に買収したのでこの名前となった。同社は、シボレーボルトに自動運転のソフトを組み込んで、坂が多く、人があふれるサンフランシスコ市内で自動運転のテストを行っている。2017年には走行距離は12万5千マイルに達しており、これはwaymoの走行距離に匹敵する。
話は飛ぶが、最近日本で安全運転サポート車を老人が運転して、人身事故を起こした。産経新聞にその解説が載っているが(2018年3月8日)、それを読むとこの自動ブレーキは、車速15キロ以下で、ハンドルを切っていないときに作動するようだ。今回の事故は、この条件を満たさなかったために、安全装置が作動せず、生じたという。しかしこの作動条件はやや厳しすぎる。
これは上であげたグーグルの自動運転システムの能力と比べれば、一目瞭然だ。グーグルのwaymoがどのように周囲をチェックしながら、自動運転するかは、ユーチューブでみるとわかりやすい(https://www.youtube.com/watch?v=B8R148hFxPw)。
waymoは、360度すべての範囲で、対象物(クルマ、人、自転車など)をとらえ、それがどのような動きをするのかを予測しながら、自動運転を行っている。今回の日本の事故は、車速が早すぎたり、急ハンドルを切ったりすると、おそらくシステムが反応できないために生じたのではないか。メーカーは安全運転の作動条件を公表しているから、その意味で責任はないが、それにしてもwaymoのシステムとはだいぶレベルが違うように見える。これが今回のサブタイトルである「(自動運転で)ソフト企業の優位高まる」の意味するところだ。
(参考)
・The California Department of Motor Vehicles (DMV) 、Autonomous Vehicle Disengagement Reports 2017, Jan.31,2018
・産経新聞、「元特捜部長事故、自動ブレーキなぜ作動せず」,2018年3月8日
・Waymo 360° Experience: A Fully Self-Driving Journey,Youtube
https://www.youtube.com/watch?v=B8R148hFxPw
・Automotive News,Waymo looks to snowy Michigan to test self-driving cars,Oct.26,2017