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ベイズ定理と宗教的信念

ベイズ定理と宗教的信念

 2018.07.14

 ・ベイズ定理は、形式的にはわかりやすいが、その直感的意味を理解するのは難しい。しかしベイズ・ネットワークがAIの肝になりつつある現在、その内容をきちんと理解しておくことは重要だ。

 

 ・たとえば、インターネットの父であり、現在グーグル副社長を務めているビント・サーフは次のように述べている。

 

 「(ハル・バリアン:エコノミストで現在グーグルに勤務)が言っているのは、ベイジアン数学のことだ。なぜならわれわれが現在やっていることのすべては、ベイズが18世紀に導いた単純な方程式に依存しているからだ」(2016年9月,エロン大学での講演)。

 

 ・ビント・サーフと同じくチューリング賞の受賞者パールは、この式の由来をうまく説明している(詳しくはパールの本の第3章参照)。以下その説明に従う。

 

 ・ベイズ(1702-1761)は長老派の牧師で、英国国教会に異議を唱えたため、ケンブリッジやオックスフォードでは学べずエジンバラ大学に進み、そこで数学を学んだ。

 

・当時の神学上の問題は、ヒューム(1711-1776)の提起した、「奇跡を見たという人がいたからといって奇跡が実際に生じたとはいえない」という言明に関するものだった。

 

・ベイズの課題は、奇跡が実際に起こったと人々が納得するためには、どれだけの証拠が必要となるかというものだった。いま奇跡の生じる無条件確率をP(T)(キリストの蘇り)、関連した事象の無条件確率をP(S )(キリストは神の子)とする。するとベイズの式は以下のように書ける。つまりT(奇跡)を見いだした後の信念に関する条件付き確率P(S/T)は、事前の信念P(S AND T、キリストの蘇りと奇跡の存在)を下回ることはない。

 

 P(S/T)=P(S AND T)/P(T)

 

・これが1980年代になって、ベイズ・ネットワークに発展し、現在のAIの基本をなすわけだ。パールは実際にこの発展プロセスに携わっており、その経過は彼の本を読むことで、理解できる。

 

(参考)

Pearl J. and Maclenzie D.,The Book of Why, Allen Lane,2018

Vint Cerf,Arete Medallion Q&A,Elon University,2016,09/30/2016