テスラとWaymoの近況
2018.08.04
・最近になってテスラとWaymo(グーグルの無人運転車)に新たな動きが出てきた。
・まずテスラだが、EVの大衆版、モデル3の生産がようやく軌道に乗ったようだ。マスクは6月には5千台/週を生産し、次の四半期には5万台から5.5万台の生産を見込んでいると述べた。
・現在モデル3は高価版(4.9万ドルから8万ドル)の注文だけを受けており、こうして生産が軌道に乗ると、利益が出始めているようだ。このため株価も上昇している。なにしろテスラの株価は執拗な空売りをかけられており、これによる空売り筋の損失はかなりなものになったようだが、彼らは依然としてテスラの将来に”?”を抱いている。
・モデル3の将来はまださまざまな見方が交錯しているが、興味あるのは、このクルマの買い手だ。テスラの発表によると、下取りに出されるのは、トヨタプリウス、日産リーフ、ホンダアコード、ホンダcivic、BMW3シリーズなどだそうだ。また競合車種としては、アウディA4、ベンツCクラス、BMW3シリーズなどがあげられている。
・つまりテスラのモデル3が売れると、顧客の重なる日本車への打撃が潜在的に生じることがわかる。
・話をWaymoに転じると、最近アメリカのフェニックス(アリゾナ州)で無人タクシーのテスト走行を始めたようだ。ギガジンの記事(オリジナルはbloomberg)によると、同市の女子高校生が通学にこのサービスを使っているという。彼女は毎朝スマフォでWaymoの自動運転カーを自宅に呼び、自宅にやってきたミニバンに乗って通学している。
・重要なのは、テスラにせよ、Waymoにせよ、実際の走行(各都市)を他社とは比べるものないレベルで行っていることだ。詳しくはカリフォルニア州当局のデータを参照してほしいが、Waymoはすでに800万マイルに及ぶ走行実験を行っている。またテスラは世界で走っている自社のクルマの走行データのログを保有しその量は7.8億マイルに達するという(そのうち1億マイルはオートパイロットによる走行分)。
・こうした動きに日本メーカーの影は薄い。惜しまれるのは、DARPAのグランドチャレンジ2007に、日本メーカーが全く関心を示さなかったことだ。このときカーネギーメロン大学はゼネラルモーターズと組み、スタンフォード大学はフォルクスワーゲンと組んだ。こうしたレースの参加者から、仲間が生まれ、それが現在の自動運転カーの中核を担っている。たとえばグーグルのスランやカーネギメロン大学のロボティクスの権威レッド・ホイタッカーはこのときのライバルだ。
・ともかくこの分野は、半導体やソフトの技術革新によって、成否が決まってくる。クルマ屋さんのスピード感覚で判断すると遅れをとることになりかねない。
(参考)
・Campbell P. & Waters R.,"Tesla seeks to convince it has turned the corner",FT,08/03/2018
・Gigazine、「世界でただ一人、Waymoの自動運転カーに乗っている女子高生がいる」、2018年8月1日
・The California Department of Motor Vehicles (DMV) 、Autonomous Vehicle Disengagement Reports 2017, Jan.31,2018
・Otani A.,「テスラの空売り筋、巨額損失でも揺るがぬ信念」、WSJ,08/04/2018
・ギガジン、「テスラとWaymoは自動運転カー実現における最重要項目「データ」をどのように扱っているか」、2018年4月23日
O'Knane,"How Tesla and Waymo are tacklilng a major problem for self-driving cars:data",The Verge,Apr.19,2018