ブロックチェーンの特徴と有用性
2018.10.06
最近シンクタンクのマッキンゼーから、ブロックチェーンに関するわかりやすい解説書が出た(Digital Mckinsey,2018)。興味ある方はぜひ一読されることをおすすめする。ここではこの解説書が提起したいくつかの問題に関してコメントをつけておく。
・まず第一にこの解説書が指摘しているのは、ブロックチェーンがデータベースの一種だということだ。しかもそれは、多くの参加者が共有しており、各参加者はすべての内容のコピーを保持しているところに特色がある。これを可能にしたのが、サトシ・ナカモトの論文だ。彼はそこで、いわゆる「ビザンチン将軍問題」と呼ばれる、分散システムにおける課題(信用できない潜在的に危ういネットワークにおいて、情報交換することにより、信用のおける中央機関を必要としない合意形成をproof of workというコンセプトで可能にした(アントノプロス本、p4)。
・第二は、このデータベースは削除ができず、書き加え(アペンド)のみが可能になっていることだ。前回のブログでも指摘したように(ビッグデータブームの陰り、2018.9.29)、これはグーグルのNO SQLの特色の一つでもある。このため、過去の記録が全部残ることになる。最近官僚の文書書き換えが問題になっているが、もしもブロックチェーンシステムが使われていれば、こうしたことは不可能だったろう。このためブロックチェーンは不動産台帳などへの応用が考えられている。また食品の生産に当たり、使われた農薬から、加工場で利用された薬品などの登録にも便利だと言われている。
・第三は、企業におけるこの技術の応用に関してだ。未知の技術があるとき、まず必要なのはPOC(Proof of Concept、概念実証)だ。ブロックチェーン技術は、特に金融機関などにとっては、この段階にあるという。この概念は、医薬の開発にも適用され、大きな効果を上げている。ちなみに、このPOCは、ソフト開発の現場でもよく使われる言葉だ。われわれはe予測で、この概念を、経済予測に持ち込もうとしている。これは別稿で改めて取り上げたい。
(参考)
・Digital Mckinsey "Blockchain explained:What it is and isn't,and why it matters",Sept,2018
・アンドレアス・M・アントノプロス、「ビットコインとブロックチェーン」、今井崇也、鳩貝純一郎訳、NTT出版、2016年