アメリカと中国のGDP比較
2018.12.22
・フィナンシャル・タイムズ紙を読んでいたら面白い記事にぶつかった。英国のシンクタンク、キャピタル・エコノミクスが、2040年代には中国の世界GDPに占めるシェアが低下するというレポートを出した。現在中国の世界GDPに占めるシェアは19%だが、それは2020年代に20%でピークに達し、それから徐々に低下するという(購買力平価基準)。言い換えれば、中国の経済発展は2020年代にピークを迎えるのではないかという示唆だ。
・この指摘が気になって,当方の開発したe予測JPシミュレータで中国の動向を計算してみた。このシミュレータにはアメリカ、中国、日本のマクロモデルが組み込まれているので、米中の将来動向が直接比較できる仕組みとなっている。ただし予測期間は2025年までである。
・その結果は図に示したとおりである。つまり中国のGDP(ドルベース、名目値)は2025年に27.7兆ドルとなるが、同年のアメリカの名目GDPは30.2兆ドルとなり、アメリカの数字が中国のそれを上回っていることがわかる。
・当方のシミュレータは、マクロモデルによって米中両国の実質GDP、物価上昇率、名目GDPなどが求められる仕組みとなっている(共にローカル・カレンシー・ベース)。中国の場合は、元ベースの名目GDPをドルベースに転換するためには、為替レート(元/ドル)の想定が必要となる。以下この点を議論する。
・図を見ると、面白いことに気づく、今回の計算では中国の為替レートは,2025年に5.3元/ドルと想定している(現在6.9元/ドル程度)。つまり緩やかな元高を想定している。しかしこれは中国元の現在の動きとは異なる。中国元は2000年には8.3元/ドルだったのが、2010年には6.8元/ドルへと確かに2割程度元高に振れた。しかしその後はほとんど横ばいとなっている。ある意味で中国政府の元高防止策(輸出に対するマイナス効果を防ぐ)効いているとも言えよう。しかしそれによってせっかく経済成長によって中国の元が外国通貨に比べて高く評価される機会が失われるとも言える。
・日本の場合は、これとは対照的で、為替レートは、1980年に218円/ドルだったのが、1990年には142円/ドルとなり、2000年には110円/ドルと円高に振れた。これはアメリカの強い圧力の結果とも言えるが、結果的に日本人は、割安な海外旅行、割安な海外資産の購入(これはあまり進まなかった)などの機会を与えられたことになる。
・中国が今後、人口動態などから、成長ポテンシャルを中長期的に落としていくとすると、元の国際的評価を上げ、国際通貨の一つとして流通させるためには、市場で元を正当評価させる必要がある。そのタイミングは、今しかないかもしれない。
・ちなみにe予測JPシミュレータは現在改良中である。改良版の販売は2020年度に予定されているが、それにはアメリカ、中国の産業構造が同時に計算される仕組みが含まれる。
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(e予測JPシミュレータのユーザへ)
・この結果はご使用のソフトで以下のような操作をすれば,再現できます。
1)メニューで「計算」→「マニュアルモード」→「ケース1」を選択
2)「想定:世界経済」でBAUのままにしておきます→「想定:日本経済も同様。
3)「計算開始」→「結果表示」で「世界経済:要約」ページを見ます。
4)結果をエクセルにコピーして、グラフ等を描きます。
・ユーザでご希望の方には、エクセルによる結果表を送付します。登録メールアドレスからお申し込みください。
(参考)
・Johnston S.,"China's share of global output 'to fall' by 2040",FT,Dec.19,2018