ソーラー発電の可能性とディープラーニング
2018/12/28
・Jouleという学会誌は2017年に発刊し、持続性エネルギー関連の最新論文を収録しているので知られる(大手のElsevier傘下)。
この雑誌の最新刊に面白い論文が掲載されていた。それはスタンフォード大学の研究者3人(電気工学、機械工学、土木工学)が書いたもので、以下の手順で研究を進めている(この論文は機械学習の手順を知るためにも便利である)。
1)高密度の衛星写真のデータベースを作成する(DeepSolar database)。これにはGoogle Static Map APIを利用。
2)このデータでソーラーパネルの有無を見つけるために、CNN(Convolutional Neural Network,たたみ込みニューラル・ネットワーク)に掛けるが、そのための教科書データを用意する。利用されたサンプルイメージ数は約37万。
3)実際のテストサンプル(全米にまたがる))に、このアルゴリズムを適用したところ9割以上の精度で、パネルを見いだすことができた。
4)これを使って全米の10億にも及ぶデータを検証し、ソーラーパネルの有無と規模を求めた。
・その結果、全米のソーラーパネル設置数は140万と推定された。これはOpenPVプロジェクトの推定数やグーグルのPeroject Sunloofの推定数(67万)を上回る。
・さらにこの結果を国勢調査データと組み合わせることで,以下のことがわかった。
1)日照4.5kwh/m^2がソーラー設置の閾値となる。
2)所得が高いほど、ソーラーを設置することになる(15万ドルあたりがピークとなる)。
3)教育が高いほどソーラーを設置する(これは所得と相関があるからだろう)。
・こうした論文を読むと、エネルギー問題は,単に従来のエネルギー専門家に任せているだけでは不十分で、ITの専門家の知恵と能力が必要となることがわかる。この意味で、ともすれば専門分野のみに目が行きがちな日本のエネルギー専門家の奮起を望みたい。
(参考)
・Gigazine,「機械学習によって衛星写真からソーラーパネルの位置と規模を正確に特定する『DeepSolar』」,2018年12月21日
・Yu Jiafan,Wang Zheceng,Majumdar A.,Rajagopal R.,"Deep Solar: a Machine Learning Framework to Efficiently Construct a Solar Depoloyment Database in the United States, Joule Dec.19,2018"