アマゾンとネットフリックスの生産部門への進出
2019/03/03
アマゾンとネットフリックスの周辺分野への進出がすさまじい。
まずアマゾンから始めよう。最近アマゾンの発売しているダウンジャケットの人気が高まっている。それはOrolayというブランドで出されているが、カナダグースのほぼ十分の一の値段で売られている。
アマゾンは、何が売れるか、誰が購入しているかなどをリアルタイムで把握している。このリストを使えば、売れ筋商品のうち、自らが製造まで乗り出しても十分儲かる商品を割り出すことができる。つまり同社は、単なる商品の販売者から製造まで担う総合企業へと転換を始めている。
しかもその仕組みはなかなかこっている。アマゾンはソーシアル・メディア・フォローワー(つまり自分の気に入った商品の特色などをSNSで公開して広げる)を組織化し、彼らがアマゾン製品の紹介を行うことに対価を支払っている。この場合、アマゾンに選ばれるソーシアル・メディア・フォローワーは、SNSで一定の評価を得た者に限られる。これはセールスマンいらずの営業戦略だ。
アマゾンは、今後も、だれがなにをほしがっているかを常に把握することにより、様々な分野に進出してくるだろう。そのスピードは速く、情報力においても既存のメーカーや販売業者は太刀打ちできない。一つの方向はイギリスのオンライン・スーパーオカドの行き方だろう。
話をネットフリックスに移そう。今回のオスカー(アカデミー賞)では同社の作品ROMAが10部門にノミネートされ、最優秀作品賞こそ逃したが、監督賞等を受賞した。従来こうした賞は、映画館での公開が暗黙の条件となっており、動画配信サービスによる作品の受賞には抵抗が多かったといわれている。しかしROMAの受賞は、時代の流れでもあり、すでに動画配信が映画を含めた動画を見る媒体の中心となったことを意味する。
これで一番影響を受けるのは、(すでに斜陽の映画界ではなく)テレビだろう。アメリカでは視聴者のテレビ視聴時間は減りつつあるそうだ。ネットフリックスやアマゾンが豊富な資金力にものを言わせて、面白い番組を作れば、視聴者がそちらに流れるのは、理の当然だ。これは日本でも事情は同じで、つまらない番組を横並びで垂れ流している、現在のテレビ業界は、デパートがアマゾンにやられたように、そのうち急激な衰退プロセスに突入するだろう。これは、広告業界も同じで、テレビの放映枠を確保し、それをスポンサーに販売することで、利益を上げる現在のビジネスモデルはすでに時代遅れとなりつつある。
(参考)
・Sanderson R.,"Amazon's puffa jacket success shivers through luxury sector",FT,FE.22,2019
・Krause A.,"Amazon is paying people to recommend cloths to their social media followers",Insider, Fe.5,2019
・Powell J.,"Linear TV is dying",FT,Feb.22,2019