· 

エッジコンピューティングの時代

エッジコンピューティングの時代

  2020.01.18

・最近アップルがXnor(これは本来ブール代数の言葉で、否定的排他的論理和のこと)というスタートアップを2億ドルで買ったことが話題になっている。この会社は2年ほど前設立されたばかりだが、それを巡って、マイクロソフト、アマゾン、インテルが争い、結局アップルが手に入れたことになる。

 

・この会社の技術を使えば、複雑な機械学習の計算をクラウドのデータセンタに頼らず、現場(ガジェット)でこなすことができる。グーグルは同様の技術開発をCoralというプロジェクトで実施中である。これがエッジコンピューティングという手法だ。

 

・Xnorは、Ali Farhadiというワシントン大学の先生が設立した。彼の仕組みを使えば、なんとラスベリーPi(アマゾンで1万円弱で購入できる)で画像認識が可能になるという。

 

・この記事を読んで思ったのは、話は飛ぶが、テスラの先進性だ。最近テスラのEVを分解した記事が出た。そこで驚いたのは、自動運転をコントロールしている車載コンピュータの電力消費量がわずか72Wだったということだ。テスラは自動運転の実現に、汎用品を使わず、自社設計により、レイヤーをいくつか省略したことが、省エネにつながったのだろう。これをみた他の自動車メーカーの技術者は、テスラの技術は6年進んでいるといったそうだ。IT分野で6年の遅れというのは、大げさに言えば人間一生分の遅れであり、それを取り戻すことはきわめて難しい。最近テスラの株価が上昇したが、それにはこうしたことも背景にある。

 

・こうしたテスラの先進性を味わいたければ、ユーチューブでテスラのクリスマスバージョンをみればよい。これはテスラ車に装備されているソフトだ。タッチスクリーンでコマンドを入れると、クルマがクリスマスを祝って音楽付きで踊り出す。この遊び心と日本車でカーナビを更新する作業と比較して欲しい。日本車の場合、ディーラーにクルマを持って行き、更新に時間がかかり、時にはお金まで要求される。テスラとの差はあまりにも大きい。

 

(参考)

・Richard Waters and Patrick McGee,"Hey Siri,Why did apple pay $200m for an AI start-up?",FT,Jan.17,2020

・Richard Waters,"The Future of computing is at the edge",FT,June 6,2018

・日経リアル開発会議、「テスラ モデル3/モデルSを分解・分析、既存の車両にはない発見が続々」、2019Winter

・日経XTech,「テスラ、車載電子基盤でトヨタやVWを6年以上先行」,2019.12.16

・"Tesla Model X-Christmas dance",Youtube,https://www.youtube.com/watch?v=u-i_R5prdMM