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コロナショックとZ世代

コロナショックとZ世代

  2020.06.27

・最近のアメリカ各都市に起こった暴動は、いろいろなことを考えさせる。

 

・ひとつはこれがアメリカのZ世代の意見表明だということだ。Z世代とは1995年以降に生まれた世代で(今の年齢は25歳以下)、生まれながらのディジタル世代だ。つまりインターネットを日常生活の一部として育っている。

 

・かれらはフェースブックで、友達から抗議デモに参加を呼びかけられ、参加しているうちに一種のシュールな気分を共有するようになる。若い世代にとってコロナショックの影響はこうした形で現れている。

 

・イタリアの小説家で物理学者のパオロ・ジョルダーノは、それを「僕らは今人類の運命を勝手に決めようとする・・・小さな力に翻弄されている」と表現している(飯田亮介氏訳より)。ジョルダーノは1985年生まれだから、Z世代よりちょっと上だが、感性は共通だろう。ジョルダーノの文章を理解するには、かれが物理学者であることを理解しなければならない。彼の議論にSIRモデルや非線形性が入ってくるのは、そのためだ。コロナショックのように、その理解に文学的感性のみならず科学的知識を必要とする場合には、ジョルダーノの立ち位置が有利になる。

 

・最初に戻るが、なぜアメリカの若い世代が立ち上がるのか。それはビッグブラザー(オーウェルの小説1984年に出てくる独裁者)に対する潜在的な恐怖感があるからだろう。コロナショックは、防疫対策として、政府が人々の行動をすべて把握するリスクを高める。Z世代は、日常生活でさまざまなアプリを使いこなしている。その体験から、プライバシーを政府がすべて把握することは、技術的に可能なことを知っている。彼らの直接行動は、こうした動きに対する無意識の抵抗とみることができる。

 

・この問題をさらに難しくしているのが、アメリカの黒人差別問題だ。日本にも様々な問題があり、あまり威張ったことは言えないが、これを理解するには”all the way”という映画がよい。これは副題で「JFKを継いだ男」とあるように、ケネディ大統領の暗殺後、副大統領から昇進したリンドン・ジョンソンを扱った映画だ。2016年作だから、わりと新しい。アマゾン・プライムでみることができる。

 

・この映画のハイライトは、ジョンソン大統領と黒人指導者であるマーチン・ルーサー・キング師との間の、公民権法をめぐるやり取りだろう。しかし筆者が一番印象に残ったのは、ちゃきちゃきの南部人である(差別側に立つ)ジョンソン大統領が、「自分の使用人(女性)が南部からワシントンに会いにクルマで来てくれるのに、(黒人であるため)途中でトイレを使うことができない」というくだりだ。ご一見をお勧めする。

 

(参考)

・Courtnwy Weaver,"Pandemic helps 'Generation Z' ignite a movement",FT,June 12,2020

・Yuval Noah Harari,"the world after coronavisrus",FT,March 20,2020

・パオロ・ジョルダーノ、「コロナ時代の僕ら」、飯田亮介訳、Hayakawa Books and Magzines,2020/04/10