コロナショック:年末から拡大の可能性
2020.09.26
・最近ワシントン大学のIHME(Institute of Health Metrics and Evaluation)が気になる予測結果を発表した(2020年9月24日)。
・それによると、日本の場合、12月頃からコロナウィルスによる死者の数が急拡大し、2021年1月には約4万人に達する可能性があるという(追記:同研究機関の最新予測によれば、日本の数字は大幅下方修正されたらしい。ということは、それほど心配しなくても、済むかもしれない。コメントありがとうございます)。
・ちなみに日本の現在の死者数は1,544人(NHK調べ、2020年9月25日)だから、4万人といえば、この数字の25倍強だから、とても無視できない数字だ。しかもこうした数字は、専門家によるモデル計算によるものだから、単なる出まかせではない。
・ちなみに世界的によく引用されるコロナウィルス感染予測は、インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)、ここで引用したIHME、YouYang Gu(YYG)氏のモデル、ロンドン大学ハイジーン&熱帯病(The London School of Hygiene & Tropical Medicine)の4つである。この4つの機関の数字を見比べながら、各国の政策担当者はコロナショックの将来動向を慎重に検討していくわけだ。
・こうした研究機関で計算に使われているのは、感染症数理モデル(Sequential SEIR model)で、これをカーブフィッティングモデルと組み合わせて、予測値を出しているらしい。大事なのは、数字はともかくとして、その背後にある論理構造とパラメータの想定値である。それが明らかになっていれば、予測値の相互比較も、またモデル改定も可能になり、議論が進展する。
・実は便利なサイトがあって(ourworldindata.org)、そこに上で示した4機関の予測数値が収録されているから、それを見れば最新の数字をみることができる。
・なお予測の基礎になっているSequential SEIR modelの解説に関しては、北大の医学統計学研究室の解説がわかりやすい。そこにはR言語をShiny(Rでウェブアプリを作るソフト)で書いたモデルのプログラムも収録されているので、学生には便利だろう。
・日本では、いろいろな専門家がコロナウィルスの将来動向に関して語っているが、その根拠は特に外部の人間にはわかりにくい。やはり世界標準のモデルを使い、想定を明らかにして議論を進めてくれないと、何を信じてよいのかわからない。日本発のそうしたモデル計算が出てくれば、世界の医学統計学の進歩にも役立つだろう。
・いずれにせよ、これから年末にかけては、一段の注意が必要だ。
(参考)
・IHMEのサイト
https://covid19.healthdata.org/global?view=total-deaths&tab=trend
・代表的な4つのモデルの結果比較
https://ourworldindata.org/covid-models
・SEIRモデルの説明:北大医学統計学研究室
https://biostat-hokudai.jp/seirmodel/
・WSJ,「コロナ死者数の予想、背後にある複雑な数学」,2020.05.07
Brianna Abbott and Paul Overberg,"The Tricky Math Behind Coronavirus Death Predictions",2020.05.07