温室効果ガス濃度の不気味な上昇と日本の進むべき道
2020.04.10
・最近、2020年の温暖化効果ガス濃度の推定結果がNOAA(アメリカ海洋大気庁)から発表された。
・ご承知のように、昨年はコロナショックで経済活動がダウンした時期だ。したがって経済活動から生じるCO2排出量は減少したはずだ。実際昨年の世界CO2排出量は7%ほどダウンしたといわれている(参考文献3)。
・しかし大気中のCO2濃度はこの間上昇を続けた。NOAAによれば、CO2濃度は2020年に412.5ppmに達したという。これは前年に比べ2.6ppmの増加だ。
・この濃度水準が問題なのは、中期プリオン温暖期(Mid-Pliocene Warm Period、今から約360万年前)の前例があるからだ。このときCO2濃度は380ppmから450ppmに上昇した。それによって海水面は約26メートル(78フィート)上昇し、地球の平均気温は工業化前のそれに比べて約2度(華氏7度)アップした。科学者が恐れているのは、この二の舞だ。今CO2濃度が412ppmだとして、毎年2.5ppmずつ増えれば、あと15年で450ppmに達する。われわれにはあまり持ち時間がないことになる。
・もう一つ気になるのは、メタン濃度の急上昇だ。同じくNOAAによれば、メタン濃度は2020年に14.7ppm上昇した。これは1983年の記録開始以後最高の濃度増加だという。その原因は、まだはっきりしないが、おそらく湿地や家畜によるものではないかといわれている。
・メタンガスの温室効果は、CO2に次ぐ(CO2は76%、メタンは16%程度、2010年、IPCC第五次報告書)。これが増えるということは、温暖化効果が一層進む可能性があるということだ。
・以上の報告を見ても、地球気候に非可逆的な変化を生じさせないためには、一層の温暖化ガス削減が必要となる。日本はすでに発展を遂げた国だから、ここは1番、世界の先例となって温暖化ガス削減に取り組むべきだろう。これはIT革新の成果を生かすことで可能になる。それに石炭火力の廃止、クルマの脱内燃機関化、発電における再生可能エネルギーの活用などを組み合わせれば、これまで見なかった未来が開ける(興味ある方は当方のEYE_co2シミュレータの結果をご覧いただきたい)。この意味でもイーロン・マスクは先を見通している。今や温暖化問題の解決はエネルギー屋でなく、IT専門家の手にゆだねた方がよさそうだ。
(参考)
(1)Leslie Hook,"Record rise inglobal methane emissions in 2020",FT,April 8,2020
(2)NOAA,"Despite pandemic shutdowns,carbaon dioxide and metane surged in 2020",NOAA Research News,Aprol 7,2020
(3)Pierre Friedlingston etal,"Global Carbon Budget 2020",Earth System Science Data,12,3269-3320,2020