東京オリンピック開催をめぐる海外の論調
2021.04.17
・夏のオリンピック開催まで、すでに3か月を切っている。コロナショックの下でオリンピックは開催できるのか、もしくは開催すべきなのか。もう一度よく考えてみる必要がある。その際、海外論調に耳を傾けることが必要だ。なにしろオリンピックは世界を巻き込むスポーツ・イベントなのだから。
・英国の医学雑誌(BMJ)に掲載された、「今夏のオリンピックとパラリンピック開催は再考すべき」は、開催に関していくつかの論点を明らかにしている。
・第一は、現在の世界にとって最優先課題は、コロナショックの抑え込みという認識だ。この認識からは、感染拡大の原因にもなるオリンピック開催は、やめた方がよいということになる。
・第二は、開催国日本のコロナショック防疫体制が不備なことだ。現時点(2021年4月)になっても、検査体制もまたワクチンの接種体制も整っていない。この状況下でオリンピックを開催すれば、感染拡大の危険性が高まるだけだろう。日本がどうしてもオリンピックを開催したければ、世界に対してコロナショックに対する防疫体制が万全であることを示す必要がある。これがなければ、オリンピック開催に関する諸外国の支持は得にくい。
・以上は英国からの意見発信だが、ニューヨーク・タイムズ紙のスポーツ欄担当のクート・ストリーター氏の論調はもっと厳しい。ちなみに彼は大学時代テニスをやり、男子プロテニスツアーでランキングに入ったこともあるアスリードだ。
・ストリーター氏は、東京オリンピックで1.1万人以上の選手が一堂に会すると、コロナの濃厚感染源になる可能性があるという。特に日本側の防疫体制が整っていないときには、その可能性は高い。
・彼のもう一つの論点は、来年実施予定の冬季オリンピック(北京)に関してだ。すでに中国のウィグル族に対する人権侵害問題に関して、主要国がこのオリンピックのボイコットを検討中だ。日本はこれに対して、どのようなスタンスを取るのだろうか。夏季オリンピック開催国として中国側に立つのか、それとも人権問題を重視するのか。割と早い時期に態度表明が迫られよう。日本側にその認識があるかどうか。
・クート・ストリーター氏の第三の論点は、アフターコロナの時代に、オリンピックはわざわざ一堂に会してやる必要があるのかということだ。現在のIT技術を使えば、世界のどこからでも、オンラインで試合に参加することができる。これは将来のオリンピック開催の在り方にも一つの論点となるだろう。
・日本政府も、日本オリンピック委員会(JOC)も、こうした海外の論調などお構いなしに、7月開催に向けて、一路邁進している。これが果たして日本とって国際的利益になるかどうか、再考が必要だ。
(参考)
・Kazuki Shimizu,Devi Sridhar,Kiyosu Taniguchi,Kenji Shibuya,"Reconsider this summer's Olympic and Paralympic games",BMJ(British Medical Journal),2021:373:n962
・Kurt Streeter,"It's Time to Rethink the Olympics",The New York Times,2021.04.12