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コロナ続報:イスラエルの現況

コロナ続報:イスラエルの現況

210821

・今回はコロナ対策先進国イスラエルの現状と日本人のXファクタに関して記す。

 

・イスラエルは12歳以上人口の78%がワクチン接種済みで、世界のワクチン先進国である。にもかかわらず再感染が始まっている。現在100万人あたり約650人の新規感染が発生しており、そのうち半分以上がワクチン接種済みである。これはデルタ型の感染力が強いことを示している。感染が増えるもう一つの理由は、今年初めにワクチンを打ったため、その効果が半年経って薄れてきたからのようだ。

 

・このためイスラエルは本年7月30日から当初60歳以上、その後50歳以上まで範囲を広げてブースター・ショット(もう一回接種を行うことにより、抗体レベルを上げる)を実施し始めた。その副作用は、わずかであるという。

 

・これを見て、各国は3回目の接種を検討し始め、ワクチンの確保に乗り出しているようだ。日本の場合、この動きとは逆に、ワクチンを3回打った医療関係者が役所から叱責されたらしい。法的根拠はともかくとして、日本もやがては3回接種へと向かわざるを得まい。しかしワクチン確保は間に合うだろうか。

 

・日本にとってもう一つ問題がある。それは日本人のXファクター(日本人のコロナ感染率が諸外国より低い理由)が解明されたことだ(これは中島聡氏のブログで教えられた)。佐藤佳東大教授をリーダーとするチームがその解析に成功した。日本人の感染がこれまで少なかったのは、日本人の6割がHLA(人白血球抗原)の一種を持っているからだそうだ。ただ問題はこの免疫がデルタ株に対して効かないようだ。

 

・イスラエルに見るデルタ株による再感染の高まり、日本人にとって幸運だったXファクタが今回は効きそうもないこと。こうしたことを考えると、今後も感染は増え続け、日本経済の回復はまた先のことのようだ。

 

・菅首相は、本年7月に民間シンクタンクのレポートに基づき、「ワクチンを人口の4割が打ったら感染は収まるだろう」と述べた。しかしこのレポートの情報ははっきり言って古い。したがって首相の言明も楽観的すぎる。

 

・為政者が、気に入った情報しか受け止めないのか、それとも日本の官僚や学者の情報収集が世界に立ち遅れているのか、いずれにせよ国民にとっては、ありがたくないことだ

 

(参考)

・Meredith Wadman,"A glim warning from Israel:Vaccination blunts,but does not defeat Delta",Science,Aug.16,2021

・佐藤佳ほか、「ウィルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫反応から逃れるSASRS-CoV-2変異の発見」,日本医療研究開発機構、2021年6月16日

・朝日新聞、「『4割が一回接種で感染減少傾向』首相発言のネタ元」、2021年7月17日