· 

オミクロンウィルスの今後

オミクロンウィルスの今後

  2021.12.04

・最近コロナウィルスの変種オミクロン株がはやり始めている。

 

・またワシントン大学のIHME(保健指標評価研究所)によると(2021年11月17日発表)、日本でも来年2月後半から、最悪ケースでは死者が増える可能性がある(予測幅は上方向にファットテイルになっている点に留意)。ご承知かもしれないが、この研究所はビル&メリンダ・ゲイツ財団(マイクロソフトの創始者ビルゲイツによって創立された財団)の寄付を受け、2007年に創立された。同財団は2017年にも2.79億ドルを同研究所に寄付している。われわれはその恩恵を被っているわけだ。

 

・コロナに戻るが、最近ネイチャー誌が、オミクロン株に関してわかりやすい記事を載せたので紹介しておく。英語が堪能な方はぜひ原文を見てほしい。

 

・オミクロン株はボツワナと南アフリカで発生し、現在20か国以上で感染が確認されている(注:12月3日時点では日本を含め36か国で確認)。

 

 *オミクロン株の感染拡大スピード:南アフリカでは11月下旬に3,402人の感染が確認され、それが12月1日には8,561人に増えた。再生産数(R)は、南アフリカのハウテン州(Gauten)では2を超えている。ちなみにデルタ型の場合、9月には再生産数は1を切っていた。すでに英国でも感染が確認されている。

 

 *オミクロン株はワクチンや感染によってできた免疫機構を突破するか:南アフリカの場合にも感染者の25%はワクチン接種済みだった。オミクロン株は、(抗体の中和作用をかわすことにより)免疫機構をすり抜けるらしい。

 

 *オミクロン株に対するワクチンの効果:ワクチンを打っていれば、抗体の中和作用により重症化することは防げそうだ。またT細胞やナチュラルキラー細胞のような免疫システムはオミクロン株に対しても有効なようだ。

 

 *ワクチンのブースターはオミクロン株に対する防御を改善するか:まだよくわからないが、ブースターショットによる抗体の中和作用強化は、役立つ可能性がある。

 

 *オミクロン株はこれまでのコロナ変種に比べて病状が軽くて済むか:これまでの研究報告によると、そのような結果が出ているが、まだきちんとしたデータでの検証はなされていない。たとえば南アフリカの検証結果は、その人口構成が若く、その要因がどの程度病状の悪化防止に役立っているかは、わからない。

 

・いずれにせよ、日本の場合、リスク最少化を考えれれば、早めに3回目接種を実施し、来年半ばから再びコロナ防疫体制を強めていく必要がある。これは経済にとってはかなりのダメージだろう。今までの経済対策は、コロナショックは一回限りと暗黙のうちに想定していたようだ。しかしこの状況では、その大前提自体を見直す必要がある。

 

(参考)

・IHME データ:https://covid19.healthdata.org/japan?view=cumulative-deaths&tab=trend

・Ewwn Callaway & Heidi Ledford,"How bad is Omicron? What scientists know so far",Nature 02,Dec.2021