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経済予測:多様性が必要

 経済予測:多様性が必要

・週刊誌を読んでいたら、”日本政府の成長予測はなぜ甘いのか”という記事が目についた。

 

・筆者のドクターZ氏は、内閣府が2022年1月にだした「中長期の経済財政に関する試算」を例にとってこの問題を論じている。

 

・たしかに政府の経済見通し(最新版は2022年1月17日)は実態より高めの成長率を示すことが多い。

 

・これの対案として、ドクターZ氏はIFI(Independent Fiscal Institutions、独立財政機関)の設立を提案している。この機関の役割は政府から独立に国家の経済・財政状況を中立的な立場から分析することだ。すでにOECDでは、多くの国が設立済みである。有名なのはアメリカの米国議会予算局(CBO,Congress Budget Office)や英国の予算責任庁(Office of Budget Responsibility)などだろう。

 

・余談になるが、筆者はある国際会議に出たとき、米国議会予算局の責任者が、これがどのような機関かを説明する講演に出くわし、興味を覚えたことがある。

 

・日本の場合、政府見通しが甘めになるのはつとに知られており、”大本営発表”などと揶揄されている。

 

・大本営発表と言えば、その典型がミッドウェー海戦に関する報道だ。この海戦で日本は空母四隻と艦載機290機を失い、太平洋戦争の主導権を一挙に失った。日本側報道(大本営発表)は以下の通り。ちなみにアメリカ側の損害は空母一隻。

 

 「ミッドウェー沖に大海戦、米空母二隻撃沈、わが二空母、一巡艦に損害」(朝日新聞、1942年6月11日)。

 

・たしかに新聞やテレビなどの報道がこれでは困るわけで、国民が正しい判断をする機会が失われてしまう。

 

・しかしこうした報道バイアスに対抗する手段としてIFI(独立財政機関)よりもう少しうまい手がある。それはITの力を借りることだ。それによって、こうした機関設立そのものが不要になる。

 

・話は筆者側に戻る。いまわれわれは、e予測システムの開発に全力を挙げている。これは計算系・データベース・表示系の3部分からなり、日本経済の近未来(2025年)、中未来(2030年)、遠未来(2050年)の姿を、様々な想定の下に描くものだ。

 

・たとえば財政危機に関しては、為替レート、原油価格などの想定を変えると、将来の国債残高や対GDPの推移が瞬時で求められるようになる。

 

・このシステムの目的は、日本経済の将来に関して、国民が多様な選択をする機会を作ることだ。

 

・e予測は、本年度内に、一応の完成をみることになる。その仕組みはいくつかの学会で発表予定だ。乞期待。

 

(参考)

・ドクターZ、”日本政府の成長予測はなぜ甘いのか”、週刊現代、2022.04.16号

・Scott Cameron,Stephane Jacobzone,Lisa Trapp,Jorg Haas,Lukasz Rawdanowicz,Sebastien Turban,"How can independent fiscal institutions suprt the resilience of public finances?",Ecoscope,Apriol 14,2022

・福地亜希、「第3者財政検証監査機関の国際比較調査」、国際通貨研究所、2019.12.26