パソコンとともに50年
2022.07.02
・筆者がパソコンを使い始めたのは、1970年代後半のことだ。マイコンキットのTK80を友人のオフィスで見たのが、1977年だったか。
・最初に買ったのがコモドール社のPET2001だった(約30万円?)。これはCPUにモステクノロジーの6502を使っていた。このマシンにはBASIC言語が載せられていた。筆者はアメリカでフォートランを使っていたため、BASICはとっつきやすかった。さっそく最小二乗法や収束計算のガウス・ザイデル法などをプログラムしてみたらうまくいったので、パソコンの将来性を確信したのを覚えている。
・しかし未だに不思議だったのは、これを池袋西武に買いにいったことだ。地下鉄に乗って、池袋から当時勤めていた民間研究機関のあった大手町まで、これを担いで帰った。もちろん自費での購入だ。
・なぜ不思議かというと、筆者はラジオ少年(真空管や抵抗、コイルなどの部品を集めてラジオを組み立てるのを趣味にしている)だったから、秋葉原通いは日常的だった。パソコンに関しても当然秋葉原が第一ターゲットだったはずだ。なぜ秋葉原で買わなかったのか。ぼんやり覚えているのは若松通商などで、ボードスタイルのマイコンキットが売られていたことだ。ただし完成品としてのパソコンは、秋葉原に登場していなかったかもしれない。
・この疑問が解けたのは、最近の日経新聞日曜版で、理研の松岡聡さんのインタビューを読んでからだ。この記事によると、当時の西武池袋店にはパソコンの常設コーナーが設けられていたという。松岡さんは一世代以上若いから直接のコンタクトはないが、筆者はここにPET2001を買いに行ったのだ。
・それから約50年が経った。その間、使用言語はN88BASIC,LATTICE C,QUICK BASIC,VISUAL BASICと変遷し、いまではVB.NETにSQL(データベース言語)とパイソン(DASH)を組み合わせて経済予測のプログラムを書いている。時代の波にもまれながら、なんとか生き残ってきたわけだ。ちょっと自慢になるが(笑い?)、その間バブル崩壊やGAFAの勃興、日本経済の縮小などを早めに公開してきた。
・今から思うに、われわれの世代はじつに幸運だった。パソコンの発展という大波に乗って、さまざまな仕事をこなすことができたからだ。今筆者はIT革新の意義をいろいろ論じているが、その背景にはこうした経験がある。今後も現場に立つ語り部としてやっていきたい。
(参考)
・日経新聞、The Style/Interview,2022年6月26日
・室田・伊藤・越国、「パソコンによる経済予測入門」第3版、2005,東洋経済