トヨタはどうなるか
2023.02.25
・本年1月末に、トヨタは4月の社長交代(豊田章男氏から佐藤恒治氏)を記者発表した。トヨタは世界最大の自動車メーカーだが、迫り来るEV化の波にもまれて難しい状況に立たされている。
・フィナンシャルタイムズ紙チーフコメンテーターのジョン・ガッパーはそれを以下のように整理している。
*トヨタは製品の性能を絶えず向上させることにより、現在の地位を築いてきた。
*いかし急激なEV化の波に対して、この戦略はうまく働いていない。
*トヨタはハイブリッド車のプリウスでこれに対応しようとしてきた。しかし各国政府は自動車の環境規制を完全なEV化(ゼロ・エミッション)に求めるようになった。
*トヨタはこの動きに遅れている。昨年の同社のEV車販売台数は2.5万台にとどまった。
*トヨタは最近方針転換し、2030年までに350万台のEV販売を目指している。しかしこの転換は間に合うかどうか。
・なぜトヨタがEV化の波に乗り遅れたか。トヨタにソフトを提供したこともある中島聡氏はそれを以下のように述べている(life is beautiful、2023年2月14日号)。
*トヨタはソフトをすべて外注してきており、社内にソフトを作れる人がいない。
*急激なEVシフトは、トヨタの系列会社にとって、致命的なまでの痛み伴う。
*4年おきのモデル・チェンジという開発サイクルが今の時代にミスマッチ。
*ハードがコモディティ化され、ソフトが利益を上げる時代にはトヨタ自動車は戦えない。
・さてトヨタが万一こけた場合、その経済的インパクトはどうなるか。当方のEY_47Kシミュレータ(47都道府県別にGDPや産業構造を2025年まで予測)でみてみよう。
・このシミュレータで機械部門の生産額を都道府県別に見ると(2015年実績)、首位は愛知県19%、二位神奈川県で6%、三位は静岡県6%などとなっている。つまり愛知と静岡を合わせると日本の機械生産の1/4を占めている。
・いうまでもなく、機械部門でで大きな役割を占めるのが、自動車産業だ。トヨタをはじめとする自動車産業がEV化の波に乗れないと、それは中京経済圏に大きな負のインパクトを与える。
・クルマのEV化もその一つだが、IT革新の特徴の一つは、変化が早くしかも非可逆的(元に戻れない)なことだ。中京経済圏は、自動車産業の没落(?)に今から備えていた方が良い。
(参考)
・John Gapper,"Toyota has a tragic flaw in the electric vehicle drama",FT,Feb.04,2023
・中島聡、「トヨタ自動車が、負ける理由」,life is beautiful,2023.02.14
・室田・越国、「県別マクロモデルと産業連関表を使ったデータ可視化の試み」,papaios,2022年10月。