迫りくる温暖化問題の緊急性と日本の対応
2023.06.10
・少し前のことだが、世界気象機関(World Meteorological Organization)がWMO Globla Annual to Decadal Climate Change(「今後10年間の世界の気候変化:年次報告書」とでも訳すべきか)で、2023年から2027年にかけて地球の表面温度は1850-1900年の平均を1.1度C~1.8度C上回る可能性が高いと指摘した。より具体的に言えば、産業化以前の平均気温を今後5年間のうちにすくなくとも1回は1.5度C上回る確率は66%に達するという(文献[1])。
・よく知られているように,地表の平均気温が産業化以前水準を1.5度C上回ると、地球システムのティッピングポイント(CTP)を超えて、急激な変化が生じる可能性が高い(文献[2])。たとえば海面上昇による氷床の崩壊、アマゾン熱帯雨林における生物多様性の喪失、永久凍土の溶解による炭素の放出など。いよいよこうした事象が現実のものになりつつある。
・また最近では、別な角度から”地球がすでに病気の状態にある”という警告もなされている(文献[3])。ここでは、かなり異例のことだが、科学的文献に”正義”という言葉が使われている(Nature "A mearsure for environmental justice",June 1,2023)。
・地球温暖化問題というと、日本にとってはあまり現実感のないお説教という印象がある。いよいよこれが現実の国際政治の課題になり始めている。かってオゾン層の破壊に直面して、フロン使用を世界的に禁止する取り決めがなされた(文献「4」)。これと似たことが温暖化問題にも生じるだろう。
・おそらく10年以内に、世界CO2排出量配分機構が生まれるだろう。この機構は、CO2排出量の年あたり排出量を国ごとに規定する。この場合先進国の一員(さいきんちょっと怪しくなっているが)たる日本に配分されるCO2排出量は現在の半分から3分の1程度だろう。マクロ経済や産業構造を現状維持として、水素などで化石燃料を代替するという現在主流のやり方では、コスト的にも安全保障の面からもこれに対応できない。いまこそマクロ経済や産業構造を、IT革新を活用することにより、”中堅国家日本”にふさわしい形で変え、それによって結果的にCO2排出量を減らすことが肝心だ。
・e予測の温暖化モデルは、こうした視点に立って計算が行われている。
(参考)
[1]World Meteorological Orgnization,"WMO Globla Annual to Decadal Climate Change",May 2023
[2]David Armstrong etal. ""Exceeding 1.5C global warming could trigger multiple climate tipping points",Science,Vol.377,No.6611,Sept.2022
[3]Seth Borenstein,"Earth is 'really quite sick now'and indagaer zone in nearly all econogical ways,study says",AP,June 1,2023
[4]Richard Benedick,Ozon Diplomacy,Harvard Univ. Press,1991