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EV(電気自動車)市場の成熟:各車の性能比較

 EV(電気自動車)市場の成熟:各車の性能比較

 2023.12.10

・日本は世界に誇る自動車王国でありながら、市場を抑えるようなEV(電気自動車)を出していない。

 

・しかし世界ではすでにEV市場は成熟し始め、各社の発売するEVの性能比較が始まっている。ここではエドモンズ(Edmunds)のそれを取り上げる。

 

・評価項目はさまざまだが、ここでは代表的な2つを取り上げる。第一は、時間当たり充電量(Edmunds tested miles per charging hour)。第二は100マイル当たりの電力消費量(Edmunds tested consumption)である。前者はどれだけ早く充電ができるか、後者はガソリン車でいえば、燃費にあたる。

 

・まず時間当たり充電量の比較だ。これまでのクルマでは、給油時間は問題にならなかった。ガソリンスタンドの込み具合にもよるが、それに要する時間はせいぜい十数分だろう。しかしEVは電池に充電するため、時間がかかる。エドモンズは1時間当たりどれだけ充電できるかを各車で比較した。

 

・その結果は第一位がヒュンダイのIoniq6 Limited RWD(単一モータ,2024年)で868マイル(約1,390キロ)であり、一回の充電でこれだけ走れれば、問題ないだろう。二位はやはり韓国車でKia EV6 Wind RWD 2022で769マイル(約1,230キロ)である。これはKiaがヒュンダイグループであることを考えれば、共通の技術を使っているはずで、理解できる。

 

・ヨーロッパ車も健闘しており、ポルシェのタイカン(2020 Porsche Taycan 4s)が4位(690マイル)7位がメルセデスベンツ(2022 Mercedes-Benz EQS 450+)となっている。テスラのモデル3(2023 Tesla Model 3 Long Range)は10位である(569マイル)。

 

・EVに関する第二の指標、100マイル当たりの電力消費は、ガソリン車でいえば、燃費(リットル/㎞)にあたる数字だ。第一位はテスラのモデル3(2023 Tesla Model 3 Long Range)で23.9KWH/100mi(100キロ当たり14.9KWH)、第2位はヒュンダイのIoniq6 Limited RWD(単一モータ,2024年)で24.2KWH/100mi(100キロ当たり15.1KWH)となっている。

 

・アメリカでは、テスラ以外では、新興メーカーのルーシッドが検討しており、1時間当たり充電量では518マイル、100マイル当たり電力消費量では28.4KWHなどとなっている。

 

・こうした比較が行われるということは、すでにクルマがEV時代に入りかけていることを意味する。しかしアメリカの既存大メーカーも日本のクルマメーカーもここではまるで精彩がない。

 

・EV旋風に関しては、さらに先がある。EVが自動運転ソフトと結びついた時、既存メーカーはさらに遅れをとるだろう。たとえばテスラを見てみよう。同社はこれまで販売した車の走行記録をすべて把握しており、しかもユーザーの走行にあたって自動運転ソフトをシャドウで動かし、実際の運転との差を把握しているといわれる。このデータを今はやりの生成AIの学習データに使えば、自動運転車の開発に役立つことは間違いない。テスラはこの目的のためにスパコンDOJOを開発中で、その進展が今後の鍵になる。

 

・上でも述べたが、残念なことに、この旋風の中で日本車の姿は全く見えない。そういえば日本の巨大メーカーを題材にした小説「トヨトミの逆襲」が最近出版された(未読)。さてどんなことが書いてあるだろうか。

 

(参考)

・Edmunds charging test,Nov.15,2023

・Gigazine,"EV を1時間充電したときの航続距離や充電速度を統一基準でまとめたランキングを自動車情報サイトが公開",2023.12.04

・梶山三郎、「トヨトミの逆襲」、小学館、2023