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韓ドラのすごみ

 韓ドラのすごみ

  2024.02.04

・韓ドラとは韓国ドラマの通称だ。最近はネットフリックスで韓ドラにはまっている。きっかけは、テレビ朝日のドラマ「六本木クラス」を見たことだ(筆者ブログ『「六本木クラス」をみる』参照、2023年12月13日)。

 

・これが韓国ドラマ「梨泰院クラス」の日本バージョンだと知って、オリジナルの韓国版も見てみた。予想にたがわぬしっかりとした作りで面白かった。それにつられて、その後もいくつか韓ドラを見ることになった。今見ているのは、「私たちのブルースだ」。これを見ていると、最近亡くなられた山田太一氏のドラマ(たとえば「男たちの旅路」)を思い出す。

 

・残念ながら、韓ドラを見てしまうと、日本の今のテレビドラマはスカスカで見る気がしない。なぜ日本はだめで、韓ドラがうまくいっているのかを疑問に思っていた。すると友人から、NHKBSで放映されたドキュメント「韓国ドラマ世界的ヒットの秘密」をを勧められた(2022年12月22日放映、筆者のみたのは再放送版)。

 

・これを見て韓ドラがうまくいっている理由を理解できた。ポイントは、ドラマの制作プロダクションが大手テレビの下請けから脱して、オリジナルで良質なドラマを作り始めたことだ。そしてそれがネットフリックスの注目を引くことになり、その後はネットフリックスから十分な資金提供を受けて、良質のドラマを作り出しているということのようだ。たしかにネットフリックスのドラマ・ランキングを見ると、韓ドラが上位を占めている。つまりネットフリックスと韓ドラとはウィン・ウィンの関係にあるようだ。筆者が最近見たなかでは、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」が面白かった。

 

・では日本発のテレビドラマと韓ドラのどこが違うのか。第一にシナリオがしっかり作りこんであることだ。したがって見ていて飽きがこない。第二に社会のタブー問題にも鋭く切り込んでいることだ。たとえば「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」では主人公は自閉症の弁護士だ。またこのドラマでは、北から逃げてきた人たち(脱北者)の問題も取り上げていた。別のドラマでは韓国の徴兵問題を扱っていた。今の日本では、こうしたテーマは忖度されて、テレビドラマで扱われることはないだろう。

 

・昔はそうでもなかった。ドラマ作家の山田太一氏に戻るが、彼は結構タブーな問題を取り上げていた。たとえば「不揃いのリンゴ」では、性サービスに従事する女性が取り上げられていた。また「早春のスケッチブック」では受験地獄への疑問を真正面から取り上げた。しかし今の日本ドラマではこうした”冒険”は見られないようだ。

 

・やはり”世界標準になる”ためには、つまらぬタブーを気にしたり、また人気俳優を連れてきて手軽なドラマを作ることでは、だめなようだ。きちんとよいものを作れば、世界から注目されるはずだ(筆者の見るところ、WOWOWにはよいドラマがある)。上でふれた「六本木クラス」は海外からも買い手がついたそうだ。これは、なにもテレビドラマの世界だけではない。つまらぬ忖度をせずに、よいものを作れば、世界から買い手がやってくる。国内のしがらみにこだわず良い製品を作ることが、これからの日本の生きる道ではないか