メタンSAT打ち上げ成功
2024.03.10
・メタンSAT(Methan SAT)とはアメリカの環境団体EDF(Environmental Defence Fund)が約1,300億円(88億ドル)の資金を集めて打ち上げたメタン探査衛星である。これにはグーグルがAIを使って、メタン発生場所の特定化に協力している。
・EDFは、これまでにもアメリカにおけるメタン発生量が公式統計より6割高いことを見出してきた。それをきっかけに、EDFは良質なデータ収集をするため、衛星打ち上げに踏み切った。この打ち上げはイーロン・マスクのスペースXを利用して行われ、3月4日に無事成功した。これによって油田やパイプラインからのメタンの漏れや畑などからのメタン発生をピンポイントで見出すことができるようになった。注目すべきは、それが政府機関などではなく、民間の環境保護団体が実現したことだ。
・メタンの温暖化効果は、20年間の温暖化係数(GWP-20)では二酸化炭素の約80倍に達する。したがってその削減は地球温暖化のテンポを遅らせるのに役立つ。そのためにも、メタンの発生源を精密にとらえる必要がある。ちなみに温暖化効果への影響は約3割(産業革命以来)。
・EDFの主任科学者であるスティーブ・ハンバーグ(Steven Hamberg)は、自前の衛星利用によるデータ収集を、急進的な透明さ(radical transparency)と呼んでいる。つまり政府などに頼らずに、オープンソースとしてこうしたデータ利用を、自ら現実したのだ。
・このプロジェクトの面白さは、環境団体とIT企業(グーグルやスペースX)が組んで、温暖化問題の解決に必要なデータ獲得を可能にしたところにある。ちなみにこのプロジェクトのスタートはTEDだそうだから、ますますその感が強い。ちなみにTEDとは、「広める価値のあるアイデア」というスローガンの下、国際的な講演をオンラインで無料配布するアメリカとカナダの非営利メディア組織のことである(ウィキペディアによる)。
・これを見ると地球環境問題の解決にも、ITイノベーションが役立ち始めていることがわかる。しかもそれは、政府主導などではなく、民間主体のオープンソースという形をとっている。残念なことに、日本はこの分野でも遅れをとりそうだ。
(参考)
・Jeff Tollefson,"This methan-sniffing satellite will leave climate polluters nowhere to hide",Nature,01,March,2024
・BusdinessWire,「SpaceXの気候保護に向けた画期的ミッション開始を受け、MethanSATが軌道上に到達」、March,05,2024