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世界現象としての”人口減”とそれへの対応?

世界現象としての”人口減”とそれへの対応?

 2024.04.27

 

・最近日本の人口減少が加速化している。現在日本の全人口は1.24億人程度で、昨年に比べ約60万人の減少だ(参考文献[4])。

 

・ちなみに合計特殊出生率( Total fertility rate、略称: TFR)は、一人の女性が一生の間に出産する子供の人数のことだ。TFRが人口置換水準(Replacement-level fertility、2.07)を下回ると、次世代人口が自然減する(ウィキペディアによる)。日本場合、この数字は1.26(2022年)で2を大きく下回っている。

 

・アメリカでも同じ傾向がみてとれる(参考文献[3])。アメリカの合計特殊出生率は2023年に1.62となった(2007年には2.12)。前年から2%の減少だ。この現象の社会的背景となるのは、女性の社会的参加の増加と避妊の普及などである。また若い人たちの将来への不安(所得、住宅保有できるかどうか、奨学金の返済、子供の保育の手間など)も影響しているといわれる。

 

・このためアメリカの2023年の出生数は359万人にとどまり、前年より7万人ほど減った(日本の場合、出生数は2023年に72.6万人)。アメリカでは、人種別にみるとヒスパニック(ラテンアメリカ出身のスペイン語をしゃべる人々)の出生率は他に比べて高いが、これも低下しているという。

 

・こうしたトレンドをマイナスではなくむしろポジティブに受け入れようと主張するのが、コロンビア大学のベガール・スキルベック(Vegard Skirbekk)教授だ(参考文献[2])。かれはジェンダー間の平等化、教育の普及などが出生減の背景にあるが、これらがもたらす恩恵(子供一人当たりにより多くの手間をかけられる、人類が地球に与える悪影響も緩和される)を、われわれは受け入れるべきだと説く。

 

・さて日本の場合はどうだろうか。人口増を目指して、移民を増やすのも一つの方法だ。その場合には、彼らに機会の平等を保障するメカニズムが必要だろう。むしろベガール・スキルベック流に人口減を余裕をもって受け入れ、緩やかな落日を楽しむ生活態度が必要かもしれない。

 

(参考)

[1]Jessica Grose,"Opinion: Are Men the Overlooked Reason for the Fertility Decline?",New York Times,15,Feb.2023

[2]Economist,"Vegard Skirbekk on why we should embrace low fertility rates",2022.08.20

[3]Jennifer Calfas and Anthony DeBarros,"U.S.Fertility Rate Falls to Record Low",FT April 25,2024

[4]Leo Lewis,"Japan's native population declines at record rate as births plunge",FT,April 26,2024