太陽フレアの発生とそのインパクト
2024.05.26
・太陽活動は約11年周期で変化するが、今回は第25活動周期の極大期に差し掛かっている(ピークは2025年)。それに伴って様々な異常現象が観測されている。
・例えば、2024年5月8日に大規模な太陽フレア(太陽の表面で起こる爆発現象)が発生し、地球では各地で低緯度オーロラが観測された。
・この太陽フレアでGPSが影響を受け、日本でも一部の地域ではトラクタの自動操縦の精度にズレが観測されたようだ(参考文献[2])。これまで最大の被害はキャリントン現象(1859年)で、この時には大規模な磁気嵐によってヨーロッパと北米の電信網に広範囲な障害が引き起こされた(参考文献[3])。
・太陽黒点(太陽表面を観測した時に黒い点のように見える部分)の増加と太陽フレアは比例する。最近のピークは1960年代初期だった。
・筆者は当時高校3年(1961年)で、友人とともに無線機の作成に凝っていた。筆者の通っていた高校は高台にあり、屋上にアンテナを張ると、自作の機械でも日本各地の電波がよく聞こえて面白かった。
・通常アマチュア無線の周波数は主に7メガ帯だったが、当時は50メガ帯も実験していた。50メガ帯と言ってもあまりなじみがないだろうが、今のFM放送の周波数のちょっと下あたりだといえば想像がつくだろうか。つまり遠くには電波が飛ばない周波数だ(ちょっと難しい言葉を使えば、この波長では電波が電離層を突き抜けてしまうので遠距離交信ができない)。
・ある日、50メガ帯で、友人と自作の無線機を操作していたら、「This is VK4**」という英語が飛び込んできた。アマチュア無線は、国ごとにコードが異なり、日本はJA***だが、VK***はなんとオーストラリアだ。
・つまり50メガ帯でオーストラリアの電波が日本まで飛んできたのだ。これは黒点数がピークだったため、電離層が太平洋上に発生し、オーストラリアの電波を日本まで運んでくれたからだろう。あまりに驚いたので、その時どうしたかは全く覚えていない。しかし太陽黒点の異常現象だけはしっかりと記憶に残っている。
・以上は笑い話だが、最初の農業トラクタの誤動作のように、太陽フレアは、無線装置に多大な影響を与える。2025年の極大期が無事に済めばよいのだが。
(参考)
[1]Yahooニュース、「大規模な太陽フレアが連続して発生」、2024.05.15
[2]日本農業新聞、「『太陽フレア』農業にも影響 トラクタ自動操縦、国内でも”ずれ”」、Yahooニュース、2024.05.21
[3]NTT宇宙環境エネルギー研究所、「太陽フレアとは?その影響と対策について解説」2024.05.22
[4]郵政省 電波研究所、「宇宙天気予報歴史資料編」、第15回宇宙天気ユーザーズフォーラムミニ講座