· 

温暖化問題の解決策?

温暖化問題の解決策?

  2024.07.27

・温暖化問題が騒がれ始めてから、ずいぶん時間が経つ。しかし解決の糸口は見えてこない。それは、カナダの専門家バーツラフ・シュミルが述べるように、「1989年から2019年の間に世界の温暖化ガス排出量は65%増加した。アメリカ、日本、EUのような豊かな社会は一人当りエネ消費を約4%減らしたが、他方で、インドや中国のそれは4倍になった」(参考文献[3]、p191)。つまり温暖化問題が騒がれ始めて以降も、温暖化ガス排出量は増え続けている。

 

・これは地震専門家のゲラー教授が、日本の地震研究体制に関して指摘した、「地震予知などできないことがわかっているのに、予知のために膨大な予算が付く」ことと似ている。つまり温暖化問題解決のきめ手がないのに、神妙な顔をして国際会議を行い、実効性のない温暖化対策の予算だけが付くという現実だ。これは役人の予算獲得には良いだろうが、温暖化の解決にはあまり役立たない。

 

・ではどうすればよいか。まず問題の出発点をバーツラフ・シュミルが指摘した、「近代文明は4つの物質(セメント、鉄鋼、プラスティック、アンモニア)から成り立つ」に立ち戻る必要がある。この4物質の消費拡大そのものが、実は化石燃料大量消費の原因となっている。そこから見直す必要がある。

 

・その契機は、AI専門家サレイマン(ハサビスとともにディープ・マインドを創設)の公式にある(参考文献[2]、p99)。

 

 (日々の暮らし+知性)*エネルギー=近代文明

 

  (Life+Intelligence)*Energy=ModernCivilization

 

・つまり近代文明の成果を保ちつつ、エネルギーを減らすには知性の拡大に頼るしかない。これは今はやりの言葉でいえば、AIといってもよいだろう。

 

・この点に気づき始めた温暖化専門家もいる。ニューヨーク市立大学のメーソン教授は、温暖化問題の解決には、価格メカニズムを利用したカーボンプライシングではなく、投資メカニズムの抜本的変更が必要だと説く。

 

・たとえば、以下のような方策が考えられよう。

 

 *建物の耐久性を数百年に延ばす。

 

 *クルマの耐用年限を3倍に延ばす。

 

 *ディジタル・ノマドとして、のんびりとくらす(参考文献[5])。

 

   *所有からの解放。

 

 *都市の終わり。

 

・こうしたことが成り立つためには、ネットワークが必要だ。最近イーロン・マスクのスターリンクが新システムを販売し始め、それを利用すれば、どこにいてもネット接続が可能になる。またAIがエネルギー消費を増やすという心配があるが、これは現状のAIを前提としたもので、すでに人々がこの問題に気づき始めている(たとえばMEDIUMを参照)。

 

・おそらくこれからの経済問題は、どれだけ物を消費するかではなく、時間をどれだけ有効に使うかに変わっていくだろう。

 

(参考)

1)Mason J.W.,"Climate Policy from a Keynesian point of view",Heinrich Boll Stiffurg

2)Mustafa Suleyman,The Coming Wave,Penguin RandomHouse,2023

3)Vaclav Smil,How the World really works,Penguin Books,2022

4)ロバート・ゲラー、「日本人は知らない『地震予知』の正体、双葉社、2011

5)Cal Newport,Slow Productivity,Penguin,2024