AI競争、自前のスパコン開発がカギ
2024.12.07
・AIの開発競争が一段とスピードを増している。成功のカギは自社でチップを開発するところにあるようだ。その動きを追ってみる。
*チップ開発の天才(アップル、インテル、テスラなどでCPUを開発)といわれるジム・ケラーのAIチップ開発企業であるTenstorrentが開発のため6.9億ドル(約1,000億円)を調達した。資金の出し手は韓国の証券会社Samsung Securitiesとベンチャー・キャピタルのAFE partnersなど(参考文献[1])。
*アマゾンのクラウド・コンピュータ部門であるAWSは自社開発の半導体Trainum数十万個を搭載するAIスパコンUltraclusterの開発計画を発表(参考文献[2])。2025年の稼働開始時にはAIモデルのトレーニング用としては世界最大級になる見込み。これによってNvidiaへの依存度を下げることが期待できる。
*イーロン・マスクのAIスタートアップ企業xAIは自社のCollossusスパコンを10倍に拡張し、100万以上のグラフィック処理ユニットの組み込むことを目指す(参考文献[3])。ちなみにxAIは今年、投資家から110億ドルの資金を調達した。
・以上の動きからわかることは、①AI開発のスパコンはスケールメリットがあるため(大きくて、スピードが速い)、他社に先んじるためには性能向上への超積極投資が必要である、②AIチップの独占供給者であるNvidiaから独立を図るために自社開発が必要になる、ということだ。このためAI先端企業は、なりふり構わず巨大なリソースを開発につぎ込んで生き残りを図っている。
・さて日本に立ち戻ると、この分野での将来性はあまり明るくない。前にも引用したが、世界デジタル競争力ランキングは32位で(2023年)、デジタル後進国とさえ呼ばれてしまう。このままでは、単なるAIユーザーとなってしまう。これはパソコンやケータイで歩んだ道だ。ちょっとまずいのではないか。
(参考)
[1]Gigazine,「ジム・ケラー率いるAIチップ開発企業「Tenstoreent」が1000億円以上の資金を調達、2024.12.03
[2]Belle Lin,”Amazon Announces supercomputer,new server powered by homegrown AI chips”,WSJ,Dec.4,2024
[3]Stephen Morris & Tabby Kinder,"Elon Musk plans to expand Colossus AI supercomputer tenfold",FT,Dec.5,2024