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AIの進歩・天気予報・経済予測

AIの進歩・天気予報・経済予測

   2025.03.22

・最近AIの活用によって天気予報の正確化と個人利用の拡大が進み始めている。グーグルはAIを使った天気予報を発表したし、また最近では個人向けにこうした予報が行われ始めている(参考文献[2])。

 

・たしかに天気予報の場合、過去のデータは豊富だから、AIによる予報精度の向上を図ることは可能だ。ただし問題は気象現象のダイナミクスにある。それには、ロレンツの発見した初期条件がちょっと変化しただけで結果が大きく変わるという問題があり(参考文献[3])、したがって天気予報が完全に当たることは期待できないだろう。

 

・この問題を理解するためには、気象学についての若干の知識が必要だ。まず気象学の進展に関しては、コックスの「ストームウォッチャー」がお勧めだ(参考文献[4])。これは気象学の歴史の本だ。それを読むと、気象予測の数学モデルが開発され、それがMITの学者によって数値解とすることが可能になり、その結果気象に関してフォン・ノイマンと共同でコンピュータによる数値解析が行われるようになった経緯が触れられている。

 

・気象予測の花形は何といってもDデイ(第二次世界大戦で連合軍がノルマンディーに上陸)の決定に関する関与だろう。連合軍最高司令長官アイゼンハワーと気象予測担当者との間の息詰まる対話が面白い。予報が外れれば、英国から出航する兵士を乗せた多くの船が沈没の憂き目にあうからだ(参考文献[5])。

 

・本題に戻るが、気象予測におけるAIを使った進歩と同様なことが経済予測に起こるだろうか。筆者はそれにやや否定的である。なぜかというと、①気象データほど経済データは豊富でないのでAIの学習には不十分、②経済は人が関与するので、予測自体が人の行動を変えることによって変化してしまう、③経済データは基本的に非定常だからだ。

 

・それでも我々エコノミストが気象予測とその進展に興味を持つのは、気象予測のアンサンブル予測という手法が経済に適用できる可能性を持つからだ。実はこれが、われわれが開発中のe予測の要でもある。

 

(参考)

[1]Axios,”Google Cloud unveils AI weather models for the energy industry",2025/03/05

[2]Cilve Cookson & Michael Peel,"AI weather forecast project eyes access through desktop compuers",FT,2025/03/21

[3]松田佳久、余田成男、「気象とカタストロフィー」――気象学における解の多重性

気象研究ノート、第151号、1985

[4]John D. Cox,Storm Watchers,John Wiley & Sons,2002

[5]ジャイルズ・フォーデン、「乱気流」、村上和久訳、新潮社、2010

[6]Richard Lindzen et.al.,The Atmosphere--A challenge The Science of Jule Gregory Charny,American Meteorological Society,1990