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ドラマ「一つ屋根の下」をみる

ドラマ「一つ屋根の下」をみる

  2025.04.12

・あいかわらずネットフリックスにはまっている。最近そこで「一つ屋根の下」を見た。これは1993年にテレビ放映されたもので、同僚などに聞いてみると当時見たことがあるという。筆者にとっては初見だった。

 

・内容はご存じかもしれないが、マラソン選手だった長男(江口洋介)が引退し、両親亡き後の兄弟姉妹4人を引き取って育てる話だ。若き日の福山雅治(次男)や酒井法子(長女)をみて感慨深い人もいるだろう。

 

・このドラマを見ながら思ったのだが、これを現代に引き直したらどうなるか。

 

 *ドラマでは長男はクリーニング屋を開業し、三男は自動車修理工場に勤めることで、一家の生計を支えている。しかし現代だったら、クリーニング業はチェーン化しているから、個人の開業は難しい(コスト的に負けてしまう)。また自動車修理業は、クルマの電子化に伴い、中小の独立修理屋が対応するのは難しくなっている。つまりIT化が進むにつれ、生活は便利になったが、昔の生活にあった”社会的余裕”(安全弁)はなくなってきている。現代で、学歴のない長男や三男にできることはせいぜいウーバーイーツの販売員だろうが、これは配送一個当たり単価が安いから一家の生計を支えるには難しい。

 

・ではどうするか。ここでちょっと話をひねってみる。4男の文也はドラマでは絵の才能があることになっているが、ここではプログラム・スキルがあるとしよう。彼はラズベリー・パイ(パソコンの自作版、日本でも1万円程度で買える)を使ってAIの全く新たなソフトを開発する。これは技術的に可能だ(参考文献[1]参照)。ディープシークの日本版を開発するのだ。そうすれば一家は安定的な生活を確保できる(めでたしめでたし)。

 

・この展開を考えているとき、似たような発想の本があることを思い出した。それはNHKドラマで話題となった「宙わたる教室」だ。両者に共通しているのは、科学技術やプログラミングがそれまで脇に追いやられていた若者たちに、新たな道を開く可能性だ。これが令和版「一つ屋根の下」ということになる。

 

・ちなみに「一つ屋根の下」はフジテレビの制作だ。同局をめぐる昨今の騒ぎを見るにつけ、30年前にこのドラマが持っていた新鮮性はどこに行ってしまったのか。ちょっと疑問だ。

 

(参考文献)

[1]タリク・ラシッド、「ニューラルネットワーク自作入門」、新納裕幸訳、マイナビ、2017

[2]伊予原新、「宙わたる教室」、文芸春秋、2023